対談 海外駐在員編

海外駐在員対談

日本の当たり前が通用しない世界でも、
リスペクトは伝わる。

  • 幸地

    インドネシアに駐在に来て驚いたのは、1日5回行なわれるイスラム教の礼拝です。礼拝の時間は仕事中にも訪れるので、その時は一旦仕事を置いてお祈りに出かける事もここでは日常の光景です。お客様を訪問する際に出来る限り礼拝の時間を避けるなどの気遣いも必要ですし、正に異文化を感じる事が出来ますね。

  • 今川

    私が駐在するバングラデシュもイスラム圏です。約束や待ち合わせをする際に、返事が「インシャーアッラー(=神が望むなら)」などと返って来たりします。そもそも渋滞が慢性化しているので時間通りに来ることはまずないのですが。でも私たち日本人同士だと、渋滞も見越して早めに行動してしまいますよね(笑)。

  • 盛本

    タイだと「マイペンライ(=大丈夫、何とかなる)」の精神ですね。「もう少し危機感を持ってもいいのでは?」という場面も多々ありますが、私たちの常識を押しつけるのもお門違いですし、バランスを見ながらですよね。

  • 今川

    日本の当り前が通用しない世界では、日本と同様の対応をしていてもうまくいかない。現地の人にいかにモチベーション高く働いてもらうかにおいても、そうした問いはつきまといますね。

  • 盛本

    部門マネージャーという立場になってみて、ナショナルスタッフが携わる案件の進捗やPDCAが滞りなく回っているか注視する必要性を実感しています。とはいえ、言語や文化から価値観まで細かな違いを挙げればキリがありません。スタッフの業務が軌道に乗るようレールを敷き、折々に軌道修正を加えながら成功体験を積み重ねてもらうことで、モチベーションアップにつなげるよう心掛けています。

  • 幸地

    私はまずは、個人面談などで一人ひとりに真っ直ぐ向き合うことから始めました。そうすることで相手をリスペクトする気持ちは必ず伝わります。さらに言えば、伝わるように態度で示すことも肝心ですよね。

  • 今川

    スタッフ個人へのリスペクトととともに、宗教や文化への敬意も重要ですよね。ムスリムの方は「ラマダン」と呼ばれる1カ月の断食期間中は日中に食事をしないので、私もその期間はたまに日中一緒に絶食を試したりしています。また私の事務所では日本人は私ひとりですが、私が居なくてもある程度仕事が回る様に各個人に責任を持たせて仕事を進める様にしたり、指示の中に現地語を取り入れたりする事で、現地に寄り添った考え・発言をする様にしています。

  • 幸地

    現地の伝統的な衣装を身にまとうことでも敬意は伝わりますよね。現地企業に訪問する際は、インドネシアの正装であるバティックを着て行く事も多いのですが、必ず良い反応が返ってきます。リスペクトは、「興味」と言い換えてもよいかもしれません。大統領選や社会面を賑わす話題に興味を持つことでも「幸地はインドネシアのことを見てくれているんだな」と、気持ちが伝わる。いずれにせよ、「現地に溶け込みたい」というメッセージが伝わるかどうかです。

セツヨーの「顔」として、記憶に残る仕事を。

  • 幸地

    「溶け込む」という点で思い出すことのひとつに、かつてベトナムに駐在していた頃の経験があります。ベトナム最大のコングロマリット(=複合企業)傘下の電気自動車メーカーへ製品紹介に伺った時のことです。アポを取るだけでも半年以上かかり、ようやく取れたアポも挨拶程度で済まされてしまうほどスタートは苦しいものでした。その後、思いつく限りの手を尽くし最終的には契約に漕ぎ着けたのですが、そこで印象的だったのは、訪問のたびにベトナム語の会話量を増やすことでお客様の対応がみるみると変わっていったことでした。「もう無理かな」と諦めそうな状況から徐々に増していく手応えを実感できましたし、「人」対「人」の商社ビジネスならではの醍醐味が詰まった、苦くも忘れがたい仕事です。今ではベトナム全土を走るすべてのEV緊急充電用車両(=EV充電機能を持つロードサービス車)に使用されています。

  • 今川

    駐在員事務所での仕事は先陣を切って市場の中を突き進むだけに、苦労がともないますよね。私もバングラデシュは情報がとにかく少なく、すべてが手探りでした。おまけに最初のミッションは、駐在員事務所自体を立ち上げること。スタッフの面接からコンサルタントの選定、事務所の内装チェックに至るまで、まったくのゼロからのスタートだったので大変でしたが、これまでで最も記憶に残る仕事となりました。晴れて開所式を迎えた日には、現地省庁の長官や日本大使をはじめ錚々たる方々に集まっていただけましたし、今でも思い出深い1日となっています。要人との交流という面では、駐在員が少ないため日本人コミュニティの関係も密ですし、日本から来訪された国会議員と席をともにするなど、非日常的な体験にも面白味を感じています。

  • 盛本

    人との交流が明らかに増えることは駐在の魅力のひとつですよね。日本で仕事していても取引先の社長やGMクラスの方とお会いする機会は、そうめったにない。けれども海外駐在していればセツヨーの「顔」として、仕事やプライベートをともにすることが自然と起こります。そこで築いた関係値の深さは例えば日本で、あるいはまた別の駐在国で再びお会いする機会にも活きてくる。また、裁量権を持って仕事ができる点にも駐在の魅力がありますよね。ひとつ事例を挙げると、家電生産のマンパワーが不足している海外のお客様から急遽、タイのサプライヤーで生産カバーできないかとの打診をいただき、仕様面のヒアリングから、生産設備の輸送、量産体制の構築まで一手に引き受けて対応したことがあります。こうしてお客様の期待に応え続けることで、「盛本となら仕事がしたい」と言っていただけるような駐在員になりたいと思っています。今はまだまだ前任者が築いたビジネスの上で仕事をしていますので、今後は私自身の手でセツヨーの柱となるようなビジネスを作っていきたいです。

可能性はいま、アジアにこそある。

  • 今川

    学生の皆さんに声を大にして言いたいのは、「もう少し世界に目を向けてほしい」ということです。国内に明るいニュースが少ないこんな時代だからこそ、海外に目を向けることでできる発見がたくさんありますし、海外では想像以上に多様な人たちと出会うことができる。世界では毎日様々なニュースがあり、日々変化しているという事に気づくことが大事です。

  • 幸地

    なかでも、ぜひアジアに注目してほしいですね。
    世界のなかでいま、アジアは群を抜いて人口が多い地域です。インドが顕著な例ですが、まだまだ底知れぬ成長のポテンシャルを秘めています。私たち日本人には、同じくアジアに暮らす人々と共感できる部分がたくさんあります。
    ただ私が面白いと感じるのは、実は微妙な違いのほうです。似ているがゆえに気づくことができる、細かいディテールでの違い。この微妙な差異がもたらす気づきはとても奥深く、自然の機微に触れた時のような驚きがあります。

  • 盛本

    周囲を見ても、これほど若いうちから様々なバックグラウンドを持った人たちと協働できる会社はそう多くありませんよね。私自身の就活を振り返って学生の方にお伝えしたいことは、「会社に入って何がしたいのか」自分の中の確固たる軸を探してみてほしいということです。大学時代に私は英語を専攻していましたが、前職では英語を使うことなく国内で仕事をしていました。しかし、ふとした瞬間に「どうして自分は英語を学んでいたのだろう」と自身を見つめ直したことをきっかけに、「海外で視野を広げたい」という原点に立ち返ることができセツヨーに入社しました。結果、海外での仕事や人との出会いは、私にとってかけがえのない財産になっています。

  • 今川

    目的意識をもつことは仕事をするうえでも欠かせませんよね。普段から目的意識をもって物事を見ていればこそ、「この課題には日本のあの製品が活用できる」「あの国にはこの領域のビジネスがないからチャンスがある」といった発想が浮かび上がりますから。現在のバングラデシュもしかり、劇的な進化、国の発展する様を見届けられる場所はアジアをおいて他にありません。私が新興国で仕事をする喜びは、そこに尽きます。今後おそらく、アジア各地のナショナルスタッフが日本の本社で働く日もそう遠くないでしょうし、皆さんが働く次世代のセツヨーはきっと国際色豊かな会社へと成長していくことと思います。

  • 幸地

    次世代の方たちには、まだセツヨーの拠点がない国にどんどん新たな拠点を立ち上げていってほしいと期待していますし、むしろそうした目線で来てほしい。ここセツヨーには、そんな意気込みや気概を持った皆さんが活躍できる場所が存分にありますから。

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